研究開発部では、従来の開発方法論をベースに、IoTや生成AI技術を活用した新しい開発方法論を考案し、製品・サービスの研究&開発プロセスをDX化(デジタルトランスフォーメーション)したPROTOTYPE-Xを開発しました。
新しい技術やサービスが次々と誕生し、価値創出を目指すイノベーションを実現するには、独創的な発想や技術を市場化まで橋渡しするプロセスが重要になります。自分たちに足りない知見や技術、資源を有する関係者を巻き込みつつ、市場に近い環境で新製品やサービスの実現可能性、性能、受容性などを繰り返し検証し、市場化に向けて改良を重ねるプロセスです。オープンイノベーションでは、市場化までの時間(Time to Market)を短縮することが価値を生み、高速に繰り返し試験を行うことのできる場「テストベッド」がイノベーションの鍵を握っています。 (一部出典:三菱総合研究所 マンスリーレビュー(2022年9月号)「日本発イノベーションを迅速化するテストベッド」)
事前調査プロセス:独創的な発想を活かすIoTや生成AIなどの新技術は差別化の手段として有効ですが、実際には、企業内にはノウハウを持った人材がおらず、ノウハウを持った会社と協業するか、信頼できる相手と一緒に試してみないと分からないのが現実です。
POCプロセス:そこで実行されるのが、PoC(Proof of
Concept:概念実証)です。PoCは、新しい技術やアイディアの実現可能性や効果を確認するための検証プロセスです。製品やサービスの簡易版を作成し、目的の効果や効能が得られるか、製品やサービスの実現可能かどうかを実験的に評価・検証します。しかし、PoCの実施には以下のような課題があります。
プロトタイピングプロセス:PoCに成功した企業が次に進むプロセスが、プロトタイピング*4です。プロトタイピングとは、製品やサービスの試作品(プロトタイプ)をもとに、様々な検証を重ねながら柔軟に軌道修正することで、より顧客満足度の高い製品やサービスを開発する手法やプロセスです。プロトタイピングでは、必要な機能や非機能の要件(拡張性、信頼性、品質、セキュリティなど)を明確にします。
しかし、プロトタイプ(試作品)の開発には時間とコスト(半年以上、1千万円以上)が掛かります。 そのため、完成した頃には顧客や社会のニーズも変化してしまい、不要なものになってしまうリスクがありました。
製品化プロセス:プロトタイプ作成後、社内外の声をフィードバックし、必要な機能を実装した商用サービスを作成します。
一般的には、非機能要件を実装するため、作り直すことが多いので、さらに時間が掛かります。
こうした研究&開発プロセスをコストを掛けずに、短縮し、成果を挙げるために、
PROTOTYPE-Xは開発されました。
PROTOTYPE-Xは、IoT-EX株式会の「次世代型相互接続基盤技術」(製品名:IoT相互接続基盤サービス)を活用しています。この技術は、以下のような国際特許を取得しています。
PROTOTYPE-X は、フロントエンドとバックエンドに分かれており、次世代型相互接続基盤を、BaaS(Backend as a Service)として使います。これにより、開発者は、バックエンドはIoT-EX社に任せ、フロントエンドに集中できます。これにより、サーバを立てるとか、設定するといった作業を自分でやらなくても済むので、開発期間を短縮でき、システムの拡張や変更が容易になります。
※ IoT-EXは、IoT-EX株式会社の商標または登録商標です。
※ PROTOTYPE-Xは、IoT-EX株式会社の商標または登録商標です。
フロントエンドとは、ユーザーが見たり操作したりする部分です。それに対して、バックエンドは、ユーザーからは見えないデータベースへのアクセスなどデータ処理を行う部分です。
バックエンド処理部分を一から開発せず、相互接続基盤をBaaSとして利用することで、システムの開発期間を短縮できます。相互接続基盤はドライバの開発と設定だけで機能を追加・変更できるので、拡張性や変更容易性に優れています。
フロントエンドの機能を分離し、入力部分(UI/UX)、ロジック部分(アプリドライバ)、出力部分(画面、Google Spread Sheet)に分離しました。
また、ユーザーの操作によって画面内容が動的に変化するSPA(Single Page Application)方式、ウェブページのすべての要素(CSS、画像、フォント、フレームなど)を1つのHTMLファイルとして保存するシングルファイルウェブページ(Single-file webpage)方式により、画面専用アプリの配布や保存、修正も簡単です。また、項目名は別ファイル化しているので、自分の好きな項目名や言語に簡単に変更できます。
デバイス(Things)の仮想化には、実際にはないデバイスを存在するものとして扱う(エミュレーション、シミュレーションのため)、複数のデバイスを一つのデバイスとして扱う(ストレージやVPPなどに使えるデバイスの統合・抽象化に使う)、一つのデバイスを複数のデバイスとして扱う(複合機能を持つデバイスを単機能化した複数のデバイスとして使う)等があります。これにより、実機が届く前の段階から開発に着手が可能になり、機能検証のために費用の高い機器購入を行う必要もなくなります。
説明動画:https://www.youtube.com/watch?v=dOoGZH2yPos
相互接続基盤は、複数のシステムに点在するデータやログを、簡単に収集し、一元管理することができます。そのため、入力条件、最新状態、計算式、処理結果、動作ログなどを出力し、保存することができます。オンライン上の表計算ソフトは、誰に何を見せるのかを管理者が指定でき、データの死蔵問題を回避できます。
フロントエンドを、入力用UI/UX専用Webアプリと、その処理を実行するアプリドライバに分割するため、Webの脆弱性を利用した攻撃(SQLインジェクション等)が行えません。近年、FaaS(ファンクション)の脆弱性が指摘されるようになり、こうした対策が求められています。認証は、APIキー、証明書、トークンを使った多重認証です。また、暗号化に対応した通信プロトコル(https、tcps、mqtts、VPN等)もサポートします。さらに、セキュアエレメントを利用したデータの暗号化・復号化にも対応可能です。セキュアエレメントを使用すると、CSVファイル等に出力しても暗号化されたままですので、情報漏洩問題は発生しません。また、特定のデータ項目に署名すると、そのデータ項目(時刻や場所など)の改竄も検出できます。
新製品・新サービスの実現可能性、性能、受容性などを繰り返し検証する場を「テストベッド」と呼びます。PROTOTYPE-Xは迅速にテストベッドを構築でき、大学の研究室、大企業の研究所、大企業やベンチャーの商用サービス開発に最適です。
出典:電気学会誌(令和5年9月号)電力インフラから見た電気自動車の「動く蓄電池」としての期待-2「EV充電テストベッドの構築」
東京大学生産技術研究所 馬場博幸、今中正輝
ASPICクラウドアワードは、一般社団法人日本クラウド産業協会(略称:ASPIC、所在地:東京都品川区、会長:河合輝欣)が、総務省などの支援により、日本国内で優秀かつ社会に有益なクラウドサービスに対し、総務大臣賞、アワード総合グランプリ、各部門総合グランプリ、他各賞の表彰を行うものです。
詳細は「ASPICクラウドアワード2023」の公式サイトをご参照ください。